施工事例
過熱水蒸気式焼成機の問題
水産物加工業 T社様の場合
- 施工場所工場
- 施工内容換気・局所排気工事
- 設備ダクト
お困りごと相談内容
HACCP(ハサップ)対応の新工場を増築し、加熱水蒸気式焼成機を設置し試運転を開始した。
開始直後から焼成機本体からの輻射熱や配管バルブからの熱で作業室内の温度が50℃を超えてしまい、生産が出来ない状態なってしまった。この熱気を何とか排出しなければ生産開始困難なため島守ダクトに相談となった。
施工前の現状
焼成機を起動してしばらくすると、ボイラーより過熱蒸気が送りこまれ機器本体の内部は蒸気で満たされ上部ダクトより排出される。
そのあたりから機器本体と配管バルブは超高温になり素手では触れることができない。
作業室内はサウナ状態となり息苦しさを感じた。
温度計は50℃を超え、相当の換気量が必要である。
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焼成機は最高450℃度の加熱水蒸気を使用し食品を焼く機器である。
本体からの熱と配管バルブからの熱で部屋の中は50℃を超えようとする。 -
焼成機本体からの水蒸気は耐熱型シロッコファンで排気されている。
改善方法
作業室の換気は、焼成機から排出される蒸気の排気量と隣接する焙焼機の排気量とそれに見合うだけの給気量しか設計されていないため、本体と配管バルブからの発熱で部屋の温度が上昇する。
加熱蒸気の使用量とボイラーの熱量を考慮し、排熱のための換気量を計算した。ダクトのルートは、天井内のスペースは配管や空調機で通すことが出来ない。
最短ルートで屋外へ排出するルートとするため、折板屋根に穴を開けを排気ダクトを貫通するルートとし、給気と排気を強制換気とする第1種換気方式をとることにした。
排気は焼成機本体上の天井から真上の屋根を貫通しルーフファンを用い排気する。
給気はガラリ→プレフィルター→抗菌中性能フィルター→シロッコファンを通り4箇所の吹き出し口から作業室に給気され害虫の侵入出来ない仕様とする。
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折板屋根貫通部より水上は雨が入らないようコンパネ+下葺き+カラーGLで雨仕舞する。
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屋根貫通部の屋根を補強。
屋根上に鉄骨架台を組む方法。屋根裏での鉄骨補強や溶接作業を行わない弊社独自の方法です。 -
下葺きや補強が終わるとカラーGLで雨仕舞します。
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給気用FFU(ファンフィルターユニット)のベースを水平にセットし屋根と強固に固定ます。FFUの荷重は梁に架かる位置にセットしてあります。
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FFU外装ユニットをベースユニットとボルトで強固に固定します。
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FFU正面
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FFUに給気用シロッコファンを設置します。
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シロッコファン設置完了
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FFUにガラリを設置します。
開口率57%雨が入りにくい構造でありながら高開口率のガラリです。ガルバリウム製自社製作品。 -
FFUにプレフィルターを設置します。PS600相当ステンレス枠付。
枠は弊社加工品。既製品はアルミ枠ですが、アルミの白サビにより枠とフレームが固着するため弊社基準によりステンレス枠を使用しています。 -
FFUに抗菌防カビ中性能フィルターを取り付けます。
ろ材交換タイプを使用し、交換メンテナンスしやすい仕様です。 -
給気は4台の給気口から吹き出します。そのため給気ダクトは天井内に納めました。既存の配管・ダクト・電線・天井下地を避けながら吊り込みます。
天井内を這いつくばっての作業。うちの作業員には頭が下がります。狭所での作業、私の設計通りよくやってくれました。 -
天井給気口4箇所設けました。
面風速3.5m/s 床まで給気風が届き、床水洗い時の乾燥を速める効果もあります。 -
雨仕舞が完了したら、屋根に穴を開けます。
手前・排気ルーフファン設置位置
奥・給気ダクト貫通位置 -
屋根上から作業室内を見下ろしています。
屋根を開口したら作業室天井と補強架台とダクト(排気系統)で接続します。 -
作業室側排気口は焼成機の真上に付きます。
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ダクトを接続したら排気用ルーフファンを強固に固定します。
ルーフファンは耐塩害仕様、防虫網付、風圧シャッター付です。 -
完成
屋根の開口や屋根補強、板金の雨仕舞いまですべて自社施工です。
ルーフファンは鎌倉製作所製。 -
完成
ダクト、FFU(ファンフィルターユニット)はガルバリウム鋼板製
結果
効果あり。
外気温度10℃で室内温度は床上1.5m付近で常時22℃を保っている。
教訓
・焼成機からの蒸気の排気ダクトは角ダクトは使用しない。
・丸ダクト(シームレス)フランジ接続とし蒸気の結露水対策を施す。
・蒸気の排気ダクトの横引きは厳禁(最小限に抑える)。
以上のことに留意して設計施工が必要である。